デザインのよみかた
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2018年3月14日 デザインのよみかた #3

デザインで重要なのはセンスかロジックか

デザインにおけるセンスとロジック

大林
第3回は「デザインで重要なのはセンスかロジックか」というテーマで授業をおこないます。まずは簡単に、前回と前々回の振り返りからはじめたいと思います。

第1回は「デザインという言葉を整理しよう」ということで、人類がはじめて道具を持った260万年前から、長いスパンでデザインの意味を見てきました。デザインというと「作ること」や「デザインされたもの」だと考えがちですが、実は「計画する」とか「準備する」といった動詞、それからプロセスの意味合いが強いということを話していきました。そして、関係をデザインしているということ。われわれがつくったものに、またわれわれもつくられているという話をしました。

第2回は「いいデザインとはなにか」というテーマで、第1回に比べると近代史と言いますか、モダンデザインの歴史として振り返って、どのように「いいデザイン」という概念が形成されていったのかを見ていきました。20世紀の最初にモダンデザインが用意されて、1950年ぐらいに飽和した状態になり、そこからまたいろんなデザインが生まれて、最終的にコンピューターやインターネットが現れた1990年代以降の情報化社会における「いいデザイン」の話をしました。さらに、これからは近代化のサイクルがもっと早くなっていくのではないか、という見通しを立てました。

第3回となる今回は、デザインにおけるセンスとロジックを考えていきます。

ここで言うセンスとは、自分の中にたしかにあるけど、なかなかうまく説明ができない感性のことを指しています。何の根拠もないけど「これいいじゃん」と確信して思いつくようなこと。対するロジックは、「なぜこれがいいのか」を理路整然と説明できることです。前者はノリでやっちゃうこと、後者は真面目に正解を考えることぐらいの対立ですね。それで、このどちらが重要なのかというのを、今日は考えていければと思います。

センスとロジックという言葉は、なんとなく共有できていると思うので、まずはすこし細かいところを解説しながら進めていきます。その後に、ロジックというものをロジカルに考えてみます。最後にデザインのプロセスで必要な合意形成において、センスとロジックをどう使えばいいのか、どうやって人を納得させたり、考えていることを共有すればいいのかを話していきます。

それでは、さっそくはじめたいと思います。デザインにおいて、なぜセンスとロジックが大事かというと、なにかアウトプットをしなければならないときに、途中段階で考えていることを説明しないといけないじゃないですか。これは、そこに実在しないものを説明することなので、設計図やスケッチを見せることになります。今やろうとしてることが大事な理由を共有して、説得することが必要になる。なので、実在しないものを実在しているかのように扱う方法と言い替えてもいいかもしれません。それは同時に、自分自身も納得させるプロセスなんだと思います。

いいデザインの分解 いいデザインの分解

前回の授業で「いいデザイン」の話がありましたけど、それを分解して考えてみたいと思います。つまり、ここはロジカルに考えるわけです(笑)

「いいデザイン」には二種類あって、ひとつは「目的に合っている」というもの。合目的性と言ったりしますが、これはデザインの有用性を保証しているということです。そしてもうひとつ、デザインそれ自体を見たり使ったりして「気持ちいい」とか「美しい」という評価もあります。最初の「目的に合っている」かどうかは、目的に対しての期待値とか、それがどれだけ達成できているのかを測定できるので、ロジカルな判断が可能です。それに対して、「気持ちいい」とか「美しい」という価値は、我々の感性の話になる。ここを詳しく見ていければと思います。

デザインの美的判断 デザインの美的判断

「気持ちいい」とか「美しい」といったものを「美的判断」と言うんですが、これはロジックとセンスに分けることができます。ひとつは「一般に美しい」と言われる客観的な判断。つまり、「みんながこれを美しいと言っている」という事実、外的要因があって、ロジカルに説明ができるわけです。価値を共有しやすく納得もしてもらいやすい反面、説明が長くなってしまいがちという特徴があります。

もう一方は、「好ましい」という美的判断です。なんの説明もできず、「だってこれが好きなんだもん」と思ってしまうもの。これは内的要因から来るもので、ただ自分のなかから湧き上がってくる想いが先行して判断しているわけです。しかも、その判断は自分の今までの経験から類推されるので共有しにくい。だけど、想いが先行してしまって、人に押し付けずにはいられないというものです。

このように、美的判断には二種類あって、これがちょうどロジックとセンスを二分したものになっています。

さて、ここで昨今のビジネスにおけるロジックとセンスのわかりやすい例を紹介したいと思います。1980年代ぐらいからハーバードビジネススクールなんかでMBAというビジネスのマスターを取得するというキャリアが、アメリカ発で世界的なブームになりました。そこで大事にされてきたのが「ロジカルシンキング」です。景気がいいときの超合理主義と言いますか、垂直統合的な洗練のされ方なので、ある種のモダニズムでもあると思います。

中村
ちょうど、前回紹介したモダニストたちがロジカルで、後半で紹介した、ウィリアム・モリスなどの工藝系の流れをくむ人がセンス寄りだと思いますね。

大林
そうですね。それで、当時は今説明したような価値観を持った人、いわゆるヤッピーたちが溢れていました。フォーマルウェアが記号として、貴族社会から一般社会のステータスになっていった時代ですね。映画で言うと、リチャード・ギアが主演の『アメリカン・ジゴロ』に衣装提供したジョルジオ・アルマーニのスーツが売れたり、『ウォール街』でダークヒーローの投資家ゴードン・ゲッコーを演じたマイケル・ダグラスに憧れて、若者が投資銀行に就職しようと殺到した時代です(笑)

さらに1990年代になってコンピューターでの情報処理やインターネットの利用などがビジネスなっていき、このロジカルシンキング的な合理性が価値とされる時代も続きました。問題を見つけて解決していくというのが基本フォーマットの「ソリューション」ビジネスです。「結論から言いなさい」とか「論理的に整合性を取りなさい」といった話は、今でもよく言われたりすると思うんですが、その理由のひとつにコンピュータを使って仕事をする環境に変わったことが大きかったのではないかと思います。

その価値が、最近は「イノベーション」の方に比重が移ってきました。こちらは「新しい価値を生み出せ」という要求です。そのために、論理的な思考プロセスよりも、直観的により多くのことを思い付き、それを統合していくプロセスが大事になりました。ロジカルシンキングに対して「デザインシンキング」と呼ばれます。ロジカルシンキングが垂直方向の知性なら、デザインシンキングは水平方向の知性で、包括的に多様性を取り込んで、自分たちに都合のいい偶然が起こる機会を増やすというものです。

情報社会のモダニズム、左脳から右脳へ 情報社会のモダニズム、左脳から右脳へ

ロジックという論理的な判断は左脳的で、センスという直観的な判断を右脳的だとよく言われます。よく左脳人間、右脳人間などと言ったりしますよね。左脳が論理思考の中枢的な役割を果たして、右脳が直観だけでなく、創造的な作業や映像処理をおこなっているそうです。この意味では、左脳的な価値から右脳的な価値が重視される時代になってきたと言えます。実際の脳は左右で補い合ったりするらしく、科学的根拠のない俗説とされていますが、今回問題にしているロジックとセンスを分割して考えるには、イメージしやすい例になります。

デザインにおけるセンスとロジックの違い デザインにおけるセンスとロジックの違い

改めて、デザインにおけるセンスとロジックの違いをまとめておきますと、ロジックは事実の論証によるものなので、広く浅い理解をしてもらうことができます。客観的な事実によって成立していて、ある特定の正確な答えが出せる。なので、言語化することができて、再現性があるものです。

もしかするとセンスは、理解すると言うよりも把握と言う方が近いニュアンスかもしれません。あくまで自分の感覚による把握なので、なかなか事実として成立しにくいけど、確信としては狭く深い。その人が信頼されていることで成立するようなものです。個人的な想いであり、言語化するのも再現するのも難しい。

先ほど「ロジックのみのデザインだとみんな同じデザインになってしまいませんか?」というコメントがありましたが、まさにその通りだと思います。もっと言うと、ロジカルなものは計算できるので、理屈としてコンピュータで代用できるはずです。だから、誰か特定の人がやらなくてもいい。そんな背景から、左脳的なものから右脳的なものへと価値が移り変わってきているんだと思います。

ロジックをロジカルに考える

大林
次に、ロジックをロジカルに考えていきます。まずロジックには「演繹」と「帰納」と「アブダクション」の3種類があります。ビジネスの場面で、よく「もっとロジカルに考えて」とか「根拠はどこにあるんだ」とか言われることがあると思うんですけど、その人たちが言っているのは「演繹」か「帰納」のどちらかなんですよね。

デザインにおける「演繹」 デザインにおける「演繹」

まず「演繹」ですが、このような論理構造が前提にあって、一般的で抽象的な大前提があり、そこから具体的な結論を導き出すというものです。中学校ぐらいに「三段論法」というのを習ったと思います。「人間は死ぬ」「ソクラテスは人間だ」「ゆえにソクラテスは死ぬ」というやつ。あれがまさに演繹法で、「人間は死ぬ」という大前提があって、「ソクラテスは人間だ」という小前提があり、そこから「ゆえにソクラテスは死ぬ」という結論が導き出されるというロジックです。

デザインにおける「帰納」 デザインにおける「帰納」

それから「帰納」というのは、いろんな事例から導き出される考えという理解でいいかと思います。演繹とは逆で、先に具体的な事実があって、そこから抽象的な結論が導き出される。例えば、ある人が「明日は晴れだ」と言って、他の何人かも「明日は晴れる」と言っていたら、「じゃあ明日は晴れなのかな」と思う。これはいろんな事例から同じ法則を見出して、自分が問題にしているものの答えを導くという方法です。

たとえば、説得資料みたいなスライドをつくったりするときに、よく事例を見せますよね。例を見せるとわかりやすいので。それで提案しているプランが正しいと確信してもらうわけですけど、その前に帰納的な推論に合意があるんだと思います。

というわけで、今説明した「演繹」と「帰納」のふたつが、普段「ロジック」とか「ロジカル」と言われるときに指示されているものになります。

デザインにおける「アブダクション」 デザインにおける「アブダクション」

しかし、実際のデザインプロセスでは、演繹でも帰納でもない考え方をすることが多い。それがもうひとつの「アブダクション」になります。ビジネスの現場では、あまりこれをロジックとは言いません。その代わりにクリエイティブと呼んだりしますが、れっきとしたロジックです。

アブダクションは、まず仮説から考えます。根拠なく思いついたことだけど、それが合ってると思える経験則が自分のなかにはある。そして、その思いついた仮説に対して検証するのが、アブダクションという推論です。この思いつきの仮説の部分はセンスで、検証の部分が一般に言われているロジカルな作業になるかと思います。つまり、アブダクションはセンスとロジックが交差するところなんですね。

ほとんどのクリエイティブな仕事は、この仮説を出すところ、いわゆる感性のジャンプに責任を負って仕事をしていると思うんです。ここもロジカル求めてしまうと、誰でもできることなので、仕事として価値がなくなっていくはずです。

アブダクションは論証性が低いが、創造性が高い アブダクションは論証性が低いが、創造性が高い

3つのロジックについてまとめていきました。上から、演繹、帰納、アブダクションと並んでいますが、論証性とか確実性については演繹がもっとも高く、その次に確実なのが帰納で、最後にアブダクションがありますが、創造性についてはアブダクションが一番高い。さっきとは逆で、次に帰納があり演繹がある。要するに、演繹的に進めるプロジェクトは、クリエイティブにはなりえません。官僚的なプロジェクトだと、アイデアが出せない。ジャンプをする余地が認められないということになりますよね。

【宣伝】もっとくわしくアブダクションを知りたい人へ 【宣伝】もっとくわしくアブダクションを知りたい人へ

さてここで宣伝になってしまいますが、『学習まんが 記号とアブダクション※1』というのを作って売っています(笑)もっと詳しくアブダクションについて知りたい人は、漫画で楽しく学べるので、もしよかったら買ってみてください。これは冊子なんですけど、Webでも読めるので、もしよかったら読んでみて下さい。以上、宣伝でした(笑)

デザインの合意形成〜結論

大林
続いて、デザインの合意形成について話したいと思います。まず第1回にお話しした内容を簡単に振り返ってみます。一番しっくりくるデザインの定義はこんなものでしたね。

デザインの定義(第一回の再掲) デザインの定義(第一回の再掲)

それから、今日の講義のはじめに、実在しないものを実在するかのように確認していなければならないという話をしました。

デザインプロセスにおける合意形成 デザインプロセスにおける合意形成

デザインのプロセスをリニアに見ると、なにもないところから企画を出して、そのアイデアを実際につくって、最終的にデザインされたアウトプットにするという流れになります。その間に、タイミングを見計らいながら合意形成をしていかないといけない。これを先ほど説明したセンスとロジックという道具を使って、どうやって説得していくべきかを考えていければと思います。

余談ですが、こういった合意形成の作業が嫌でデザイナーになった人、結構多いと思うんですよ。こんなのしたくなくて、ただつくりたくてデザインの仕事をしているかもしれませんが、これは社会人というかビジネスに関わる上で避けられないものだと思います。必要悪。「悪」と言うとよくないかもしれませんが、いずれにしてもプロジェクトで妥協しないための政治的な立ち振る舞いとして必要なものです。ただここをロジカルに考えることで、かなり頭のなかが整理されて、むしろデザイン的に考えられると思うので、すこしお付き合いください。

デザインにおけるセンスとロジック デザインにおけるセンスとロジック

合意形成において重要なのは、ひとつはスピード感を持つこと。時間の話ですね。それで、もうひとつはコストをおさえるというところだと思います。センスとロジックの経済性を考えると、センスはものすごくスピードが早いんですよ。思い付きなので早いですよね。一方、ロジックは説明が必要になるので、どんどん遅くなっていく。

個人的に一番やりやすくて、早くて、しかもコストを抑えられるのは、感覚的に合っている人たちとやるプロジェクトなんです。それはそれで、変なところに進んでも、誰も止めないというカルト的な危うさもあるんですけど、感覚が合っている状態でどんどん決まっていくと、本当に話が早い。それには、お互いを信頼していることが必要になります。エンジニアリングで言われる「アジャイル開発」と同じで、前提となっているのはチームの信頼関係です。それがあれば、センスでデザインを推し進めて行ける気がします。

一方のロジックは、スピードが遅くて、説明のコストがかかってしまう。逆説的に聞こえますが、ロジカルな合意形成は経済的ではないんです。ただ先ほども説明したように、論証性と確実性が高い。つまり、失敗する可能性を許容して早く安く進めるか、失敗をまったく許容せず着実に進めるかの二択の話をしているのがわかるかと思います。でもデザインはプロトタイピングが基本なので、失敗しながら修正していくもんです。

そうすると、プロジェクトの構造的な問題に行き着いてしまうんですが、ロジカルさを強く求めるプロジェクトは、大抵の場合にステークホルダーが多いんですね。それぞれが仕事に違う責任を持っていて、その人たちと一斉に合意しなければならないという複雑性を孕んで、最終的には政治になっていく。そういうときによく提案されるのが、投票による多数決なんです。これは帰納法による決め方ですけど、もともと自分たちで判断できないから、デザインの専門家にお願いしたのに、自分たちで最終判断をしていることになるので、ロジカルに考えておかしい(笑)

でも投票数に根拠を求めず、人を巻き込む手段として投票するのは問題ないと思うんです。行政が絡んでくるプロジェクトが多い建築の領域では、よく使う手段だと聞きます。政治的にはアリだと言うことですね。この講義では、「デザインの意味を定義するのはむずかしい」とか「いいデザインは時代によって変わる」とか、われわれ自身が政治家のような話をしてますが(笑)これはプロジェクトという民主主義的な空間をどうデザインするかという話です。なので、ちゃんとアブダクションできる余地もデザインしておかないといけません。

「じゃあどうすればいいの」という話ですけど、やはり丁寧にプロジェクトチームの意識を合わせていくのがいいんだと思います。すごく当たり前のことを言ってると思いますけど(笑)厳密なロジカルさを求める人がいれば、今説明したようなロジックの構造をちゃんとロジカルに話し合う。そういった姿勢が大事だと思います。エネルギーで巻き込んでいくのも、最初からお腹を見せちゃうのも戦略としてアリかもしれません。人間はそんなにロジカルにできてないので、強い信念や情感に流されることも多いと思います。

だから、なぜ説得するかと同時に、どう説得するかも重要ということです。合意形成の仕方で考えると、ロジックは構造物として空間的な説得力がありますが、一方でストーリーを語る方法も合理的です。ロジカルに整理するよりも、物語の形式で時系列にインプットする方が、エピソード記憶には残りやすい。

いずれにしても、センスとロジックはどちらも大事です。とくにアブダクションは、センスではじまって、最後にロジックでまとめるもので、デザインのプロセスではとても大切です。メッセージとして言いたいのは、センスは皆さん一人一人のもので、ロジックはみんなのものだということです。ロジックという共有された道具をうまく使いながら、あなたのセンスを伝えられるようにしておきましょうというのが、今日の結論になります。

事例

事例1:ICカードの改札機の角度 事例1:ICカードの改札機の角度

中村
では、最後のセクション、事例ということで、いろんなものを3つほど選んできました。それでどういうプロセスでできてきたかな?と逆算的に見ていきたいと思います。最初はICカード改札機の角度。ちょっと実際の写真を見てもらうと分かるかもしれません。これは、こうやってタッチパネルのところに角度がついているんですよね。日頃から皆さんもお使いだと思いますが、この角度、13.5度というものすごく半端な角度で、10度でも15度でも13度でもないんですね。これがなぜこの角度になってきたかということで、仮説もあればアブダクションもあれば経験則もあればというところなんですけども。これは、タッチパネル型の改札機ということで、ICカードを読み取らせなきゃいけないわけです。例えば、定期券、切符を通すタイプで考えることもできるし、昔あったような、駅員さんに見せていくタイプもありますよね。ただこの場合、ICカードというものを読み取らせなくてはいけない以上、どこかにタッチしなくてはならない。どう触れさせるかというところが、こういうものをつくるときの課題になるわけです。

実際のデザインされた山中俊二さんが、自分自身のwebサイトにプロセスを書かれていますけれども、結果としては、角度をつけて、読み取らせる場所を発光させることによって、成立することになった。ICカードの改札機を通るという動作について、最初は5割の人がスムーズに扱えなかったわけですが、角度をつけて発光させるという処理をしたことによって、利用できない人が1パーセント以下に落ちてきた。その角度の具合とか発光させ具合とかが絶妙にだったわけですよね。改札を通る前に、発光部分を見ることができて、なおかつ、通るときの手の振りでスムーズにいく角度。実際にこの角度は色々な計算されているんですが、実際は13.5度ということで落ち着いたということなんです。

事例2:スターバックスがデザインしたもの 事例2:スターバックスがデザインしたもの

ふたつめは、スターバックスがデザインしたものということで、こういう蓋つきのコーヒーカップです。この20年ぐらいはこういうタイプが主流になってきていると思うんですけども、普段この講座みている方だと、スターバックスとかあのコーヒーチェーンが日本に来た時期のことも、おそらくご存じだと思われます。なので、その前提でお話していきます。それ以前はいわゆる喫茶店のカップアンドソーサーと言われるような、ちゃんとした食器で座って飲むという状態があった。もうひとつがオフィスとかで紙コップを使って簡易的に飲むような感じのものがあったわけですよね。そのなかで90年代後半から起こった、この手のカフェブームというやつは、ちょっと大きめの紙カップに蓋をつけるというスタイルだったんですね。カウンター式のお店の形式は、飲み物を提供するにあたってそれが最適手段だったかもしれないけれども、結果として、コーヒーを飲むというライフスタイルが変化したということなんです。どういうことかというと、お店でも飲めるし持ち運びもできるし、オフィスとかに持って帰って飲むこともできるというようなものです。元はといえば、大きめの紙コップに蓋がついているだけなんですけれども、実際、コーヒーを飲むライフスタイルそのものがデザインによって変わったのではないかな。

事例3:バーナード・リーチの『リーチ・バー』の灰皿 事例3:バーナード・リーチの『リーチ・バー』の灰皿

最後に、これはバーナード・リーチという民藝運動にも携わった陶芸家ですけれども、彼による、大阪のリーガロイヤルホテルのリーチバーというバー。そこの灰皿をご覧いただきましょう。これ、かっこいい灰皿なんですよね。下のガラス面は、後ろにあるジン、タンカレーの瓶でできています。このガラスを砕いてつくられているんですけども、これ、灰皿にしては珍しいもので、タバコを固定する溝が掘ってない。スタッフの方に聞いたんですけども、そのせいで、タバコが転がって困るという話もありました(笑)このリーチバーは不思議な空間で、スタッフとしてもバーとしては、なかなか使い慣れないところが多いらしいんですね。でも名物なので壊すわけにはいかないという話だったんですけど。スタッフいわく、バーナード・リーチはお酒を飲むときにタバコを吸う習慣がなかったんじゃないかということを言ってました。自分の経験値から考えた結果、このようなつくりかたになったのではないかと想像します。この空間自体は、いわゆる民藝調のデザインではあるんですけれども、ちょっとイギリスのパブみたいな雰囲気になっている。だからオーセンティックなバーとはちょっとちがう。だから、普段なじみががなかったバーナード・リーチが、イギリス人としてなじみのあるパブみたいな空間としてつくったのではないか?という解釈で紹介をしてみました。

今回はこれで終わりなんですけども、センスとロジックということで、デザインにかかわる人は永遠の疑問であり、悩みみたいなところはあったと思いますけれども、結果としてはどちらも大事ということでした。そのブレンド率と言いますか、ケースバイケースで気にしながらいければいいのかなと思います。すごい無責任ですが(笑)

大林
完全に政治家の言いっぷりですね(笑)

そう言う僕も中村先生と同意見なんですけれども、気持ちとしては自分のセンスを信じて仕事をしているところがあるので、そこは捨てられないと思います。センスという言い方だと、なんか鼻につきそうですね。ロジックでは捉えられないものを信じていると言った方がいいかもしれません。もしロジックを信じるのなら、わざわざ自分がやることではないと思ってしまいます。

中村
結構ロジカルに考える風潮があると、センスという言葉が出すのがまずいみたいな感じになってしまうのかもしれないですね。「あの人結局、センスでモノ言ってるからさ」みたいな。そうなると、マイナスイメージになってしまいますよね。

というわけで、時間になりました。次回は最終回ということで、「これからのデザインを一緒にデザインしよう」というテーマで、講義をおこないたいと思います。

デザインのよみかた