デザインのよみかた
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「デザインのよみかた」のよみかた

このWebサイトは、2018年に始動した大林寛と中村将大によるプロジェクト「デザインのよみかた」の活動記録をまとめたものです。

本プロジェクトの嚆矢となったのは、オンライン授業プラットフォーム「Schoo」での「初学者向けのデザイン講義」というオーダーでした。考えてみれば、デザインの専門課程は多くありますが、デザインの基礎課程らしきものは見当たらない。さまざまな人が「デザイン」という言葉をさまざまに使っているのが現状です。

たとえば、ロゴのデザイン、フライヤーのデザイン、ユーザーインターフェースのデザイン、プロダクトのデザイン、サービスのデザイン、プロジェクトや組織のデザインといったものにとどまらず、デザインマネジメントやデザイン思考、デザイン経営、体験やライフスタイルのデザイン、ついにはキャリアや人生のデザインなんてものもあり、デザインという言葉のインフレーションに辟易している人もすくなからずいるのではないでしょうか。

驚くべきことに、これらの用法は間違っているどころか、広義のデザインの意味にしっかり収まります。デザインとは、その意味を正確にしらなくても、誰もが先天的に体得していて、しらずしらずのうちに実践できてしまうものなのかもしれません。

たしかに、わたしたちの祖先は、生きるために道具をつくり、道具を使うことで世界を切り拓いてきました。言葉を話したり書いたりするよりも前から、さまざまなものをデザインするという孤独な作業があったわけです。デザインすることは、人間を人間たらしめる行為と言っても過言ではありません。

では、デザインをしようとするとき、わたしたちはなにをしているのでしょうか。

わたしたちは、まず自分たちが生きている環境とその関係を「よむ」ということをしているように思います。また、すでにデザインされているものを見たり使ったりして、その背景にある環境や時代を「よむ」こともする。こうした「よみ」と、それを「よむ」ための「よみかた」が、わたしたちは重要だと考えています。デザインの話なのに、「つくる」でも「つかう」でも「みる」でもない。「よむ」であり、さらに「よみかた」となっているのは、こんな理由です。

デザインという「動詞」は、人間の基本的な営みのことであり、デザインという「名詞」が、生活のインフラストラクチャなのは、疑いのないところでしょう。それならば、このデザインというものをどう「よむ」ことができるのか。あんな「よみかた」やこんな「よみかた」を気軽に提案しながら、デザインについて考えていく。それが「デザインのよみかた」というプロジェクトでやっていきたいことです。

そして、今の時代に日本という環境のなかで、教育とビジネスの現場を行き来しながら、わたしたちの「よみかた」をアーカイブすることで、わたしたちの考える「デザインの基礎課程」ができあがっていくのではないかと考えています。そこには、わたしたちの思い込みや勘違いも入り混じっているでしょう。しかし、一瞬でも心から信じたわたしたちの「よみかた」が、みなさんそれぞれの「よみかた」によって、また別のものへとデザインされていけば、本プロジェクトはその役割を果たしたことになります。

2021年6月1日 大林 寛

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